Roland D-70

1990年発売。D-50の後継機種で、ライブパフォーマンス指向のフラッグシップモデルとして誕生した、Dシリーズ最後の機種。マスターキーボード機能を強化した76鍵ベロシティ、アフタータッチ対応鍵盤を持ち、リアルタイムで音色を変化させることの出来るスライダーや大型のLCDを搭載している。 D-70は76鍵という大型の鍵盤とAdvanced LA音源という音源の組み合わせによってパフォーマンスプレイに最適化された傾向が強い。そのため、同時期のシンセサイザーに比べてもマルチティンバー音源としての性能は控えめである。さらに音源だけを使用することに意味がないという考えから、単独の音源モジュールは登場しなかった。 D-70は「SuperLAシンセサイザー」、その音源は「Advanced LA音源」と呼ばれている。実際にはRS-PCM音源を持つU-20にTVFが使えるようになったものであり、LA32チップを搭載するこれまでのLA音源と直接の関連はない。 U-20用のRS-PCMカードを使ってPCM波形を追加する事が可能であり、DLMによって新しい波形を作り出すことが出来るという点で、これまでのDシリーズとも、またUシリーズとも違った個性を持っていた。 一方、ライブパフォーマンスを重視したシンセサイザーでありながら、最大28音ポリフォニック、5パート+1リズムのマルチティンバー機能を搭載しており、スタジオでの活用も考慮されていた。 コルグのM1によって市民権を得た、プレイバックサンプラーから発展したシンセサイザーは、メモリの低価格化によって、非常に高品位なPCM波形を潤沢に内蔵できるようになった。このことは、手軽にリアルな音が誰にでも扱えるようになった反面、シンセサイザーが本来持っていた音を合成するという能力は、重要視されなくなってしまう。 ローランドは、当初プレイバックサンプラーとシンセサイザーを明確に分ける姿勢を見せていた。しかし、D-70でこれらを統合した。この事は、シンセサイザーはまずPCM再生機であるべき、という時代の到来を示していた。

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